PDF を PDF/A に変換する:その過程で何が捨てられるか
FreePDFチーム ·
裁判所の電子申立てシステム、大学の論文提出フォーム、あるいは文書保存規程。どこかで必ず「ファイルは PDF/A でなければならない」と告げられます。これは、まだ誰も書いていないソフトウェアに三十年後に開かれても耐えるよう設計された PDF です。つまり、そのページを表示するために必要なものはすべて、ファイルの内側に入っていなければなりません。変換自体は一手間で終わります。ただ、それが文書に何をするのかは二分だけ知っておく価値があります。
変換が実際に変えるもの
変わるのは三つ。いずれも狙いは同じで、ファイルが「開く側のマシン」に依存している部分を断ち切ることです。
- すべてのフォントが埋め込まれます。通常の PDF は「ここは Arial」と名前を書くだけで済ませ、あとはあなたのパソコンが持っている前提に頼れます。PDF/A はそれを許さないので、字形の輪郭そのものが文書内にコピーされます。出力が元より大きくなる主な理由がこれです。
- 色が固定されます。色はデバイス非依存の色空間に変換されます。ある赤が絶対的に定義されるようになり、画面やプリンターの解釈任せではなくなります。
- ファイルの外へ手を伸ばすものはすべて取り除かれます。JavaScript、埋め込みの音声・動画、ディスク上の別ファイルを指すリンク、そして暗号化は、いずれも規格が禁止しています。
出力されるのは PDF/A-2b です。2 は ISO 規格の版、b は適合レベルで基本を意味します。つまりこのファイルは「将来も同じ見た目になること」を保証します。この「見た目」という言葉は後でもう一度出てきます。
忠実さより適合性が優先される
PDF/A が認めない要素に出くわしたとき、変換側の選択肢は二つです。その機能を残して検証に落ちるファイルを渡すか、機能を捨てて検証を通るファイルを渡すか。ここでは捨てる側に倒しています。受け取るのは検証を通るファイルであり、そもそも誰かが PDF/A を求めた理由はそこにあります。
たいていの文書では何も失われません。たいていの文書は文字と画像でできているからです。次のものが含まれている場合だけ、変換後に開いて確認してください。
- スクリプトが仕込まれたフォームフィールド。操作できなくなります
- 埋め込みメディア。変換ではなく削除されます
- PDF の隣に置いた関連ファイルへのリンク。これは残りません
パスワード付きの PDF は別の話です。規格は暗号化を端的に禁じているため、そもそも変換に入る前にロックを解除しておく必要があります。
基本適合は「検索できる」という意味ではない
これは誤解されることが多いので、はっきり書いておきます。PDF/A-2b が保証するのは、ページが正しく見えることです。そのページの裏に本物のテキストがあるかどうかについては、何も言っていません。
スキャン文書を通せば、規格に完全に適合した保存用 PDF が得られますが、その各ページは相変わらず紙の写真のままです。選択もできず検索もできず、それでも検証ツールは何食わぬ顔で通します。保存したい対象が「あとから探せる文字」であるなら、先にスキャンへ OCR をかけ、そのあとで変換してください。順序は逆にできません。PDF/A への変換はテキスト層を生みませんし、変換後に OCR をかければ、せっかく適合させたファイルを書き換えてしまいます。
よくある質問
PDF/A にしたらファイルが元より大きくなったのはなぜですか
ほぼ確実にフォントの埋め込みです。書体を二、三種類使った文書なら数百 KB、CJK フォントを使った文書なら数 MB 増えることもあります。文字セット一式がまるごとファイルに同行するためです。この重さは、保存用ファイルが仕事をしている証拠でもあります。あとから圧縮することは可能ですが本末転倒で、ファイルを書き換えるので検証をやり直す羽目になります。必要なら圧縮を先に、変換を後に。
編集したあとも PDF/A のままですか
そうならないと考えておくのが安全です。署名を足す、フォームに記入する、PDF/A を知らないエディターで保存し直す。いずれも規格が禁じている要素を静かに呼び戻すことがあり、ファイルは PDF/A の看板を掲げたまま、実質は適合していない状態になります。変換は提出や保存の直前に置く最後の工程として扱い、途中の一段階にはしないでください。